2007年2月
今月の【料理教室】から、この一品
Suffle` al cioccolato(スフレ アル チョッコラート)
チョコレートのスフレ

 2月の【OEPN料理教室】は節分の日の3日に開催。
当日はristorante-ritzの窓から望むお寺の森から、
豆まき会の銅鑼の音や、警備にあたる警官のアナウンスなどのざわめきが…
と言いたいところ、いつものごとく、
それらをも上回るお喋りと笑い声で、いつの間にか夕暮れを迎えていた次第。
さて、今日も初めての方が多数ご参加くださった一方、
残念ながらしばらくお休みの方も。
というのは、昨年からほぼ毎回参加してくれたN美ちゃんが、
来月からお仕事で3年間もベルギーへ単身赴任。
そこで、M子さん差し入れのドンペリ(しかもヴィンテージ!)でまずは乾杯。
N美ちゃん、ますますのご活躍を。
みなさんが帰られてから、しずしずと泣き始めたのは我が息子。
いつも子供の視線になって遊んでくれたN美ちゃん。
「友達」とのお別れが悲しかったらしく…。
「ママ、今度イタリアに行ったときは、ベルギーに最初に行ってからイタリアだからね」
と約束させられました。大賛成~。

さて、今日のMENUは、
・ネギとカブのポタージュ
・小エビとズッキーニのリゾット
・豚ロース煮込みのリンゴソース
・チョコレートのスフレ。

この中から今日は、
チョコレート王国ベルギーに旅立たれるM美ちゃんを送るにはあまりにも僭越なドルチェでしたが、
バレンタインも近いということでチョコレートのスフレをご紹介します。

Suffle` al cioccolato チョコレートのスフレチョコレート
(製菓用でなくてもよい。市販の砂糖入りのものを粉状にしたもの)160g
・牛乳 500ml・砂糖100g・小麦粉 80g・バター 15~20g・
卵の黄身 3 ・卵白 2 (好みでホイップクリーム)
(1)牛乳の全分量のうち、400mlを砂糖とともに鍋に入れ火にかける。砂糖が完全に溶けるまで。
(2)牛乳の残り100mlはボールに入れ、ここにふるいにかけながら小麦粉を入れ、
天ぷらの衣を作る容量でダマにならないようによく混ぜ、ペースト状にする。
(3)(1)の牛乳を、(2)の中へすこしずつ加えていく。
泡立て器などを使って、(2)がダマにならないよう均等に牛乳でのばしていくようなイメージで。
(4)(3)を、空いた鍋にもどし、弱火にかける。つねに木べらか泡立て器で混ぜながら焦げないように。
(5)固くなってきたら火から下ろし、チョコレートとバターを加え、均一に混ぜ合わせたあと、冷ましておく。
(6)冷めたら黄味を加えてさらによく練る。
(7)白身は塩ひとつまみ加えてメレンゲ状にし、(6)の中へ。
泡をつぶさないよう木べらを使いながらふんわりと混ぜあわせる。
(8)耐熱容器の内側にバターをぬり、砂糖を軽くまぶしてから、(7)を流し込み、
180度のオーブンで30分焼く。
(9)焼き上がったら温かいうちに、好みでホイップクリームを添えて食べる。

2006年8月
今月の【料理教室】から、この一品 
Spaghetti alle vongole e cozze(スパゲッティ アッレ ヴォンゴレ エ コッツェ)
ヴォンゴレとムール貝のスパゲッティ

8月5日(土)。
猛暑の中、今月の【OPEN料理教室】も満員御礼。
このオープンスタイルの教室では、
なんといっても毎回多彩なゲストが初登場してくださることが、私にとっての最大の魅力。
今日のメイン・ゲストは、なんと、男性!しかも熟年です!
某大学病院でこの春定年を迎えるまで小児外科部長をお勤め上げた、
とはいえ新しい病院でまだまだ外来を担当なさっているという名ドクター。
ご自宅でも毎週末、ご家族のためにお台所に立つというイタリア通のお料理上手で、
来月には、ご長男のお嫁さんをイタリアンのフルコースでもてなすご予定とか。
いいな~…お嫁さん。

今月のメニューは、
Antipasito:Verdune ripiene(野菜の詰め物)
→Primo:Spaghetti alle vongole e cozze(アサリとムール貝のスパゲッティ)
→Secondo:Pollo con uva(若鶏とマスカットのソテー)
→Dolce:Spumone(セミフレッド)

この中で今回は
「うん、ここのレシピはいただき。息子夫婦が来たときに、これ作ろう!」
と先生にお買い上げいただいた「アサリとムース貝」のスパゲッティ。
このレシピ、決め手は、アサリとムール貝を惜しみなく使うこと。
そして貝だけを先に蒸し焼きにしてむき身にし、う~んとこまかく刻んでペースト状にしてしまうこと。
それらを改めてフライパンでニンニクとともに炒めること。
ミートソースの魚介版とも言いたくなるようなアサリとムールのミンチが、
パスタとよく絡まって、潮の香りを存分に堪能できる夏らしい一品。

ところで、
メスを包丁に持ちかえた先生の背中もまた素敵。
また1人、「理想の舅」が増えてしまいました。

2004年6月
今月の【料理教室】から、この一品
Melanzane ripiene(メランツァーネ・リピエーネ)
ナスの詰め物

イタリアをブーツの形に例えれば、ちょうど「かかと」にあたる、プーリア州。
私が滞在していたペスキチという小さな村は、
「かかと」よりちょっと上、アドリア海に突き出た岬に位置している。
多くの観光客でにぎわうプーリアの中にありながら、
完全に取り残されているような、のどかでのんびりした村だ。

村のおばさんたちは、ムームーみたいなアッパッパー(古い!)に、
つっかけサンダルという無防備ないでたちで、そこらじゅうで井戸端会議。
私が料理を習いに来ていることを知ると、
「まあ!今ちょうど昼ごはん食べてるのよ。
見て行きなさいよ」と、
あっちからも、こっちからも、
まるでポン引きみたいに声がかかる。

この料理は、私がこの村で出会ったそんなおばさん達の中でも、
一番巨大でムチムチした肉体の持ち主、キャラメリーナから教わった料理。
余談だけど、キャラメッラ(=キャラメル)に、
日本でいえば「××ちゃん」といった愛称にあたる「イーナ」をつけた、
ずばり「キャラメルちゃん」という名のおばちゃんだ。

プーリア名産の巨大ナスをくりぬいた中に、くりぬいた分のナスはもちろん、
チーズ、卵、古くなって固くなったパンを混ぜ合わせ、
これをナスの中にぎゅうぎゅうにつめて、トマトソースでぐつぐつ煮込む。
肉はいっさい使わない。貧しかった時代の貧乏料理なのだろう。

火が通ると、中身がぷっくりと盛り上がり、見た目は、ピーマンの肉詰めといったところか。
ところが、一口食べてみて、想像とはかけはなれた不思議な食感にびっくり。
つなぎの卵がほどよく固まって、茶碗蒸しのようでも、ぐじゅぐじゅのはんぺんのようでもある。
ひとくちごとにクセになる味わいだ。

料理が完成すると、キャラメリーナおばちゃんは一息つくようにベランダへ出て、
タバコをくわえる。
そして私が口にするのを見届けると「どう?ブオーナ(おいしい)でしょう」
と自信満々に言いながら、鼻からプーっと長~い煙を吐くのだ。
こんないガタイがいいのに、不覚にもソフィア・ローレンを彷彿としてしまうのは何故だ。
キャラメリーナちゃんの「ナスの詰め物」には、
貧しい時代の料理の中にも、どこか堂々とした風格が漂っている。
なんか、かっこいいなあ。
南イタリアの女。南イタリアの料理。

2003年11月
今月の【料理教室】から、この一品
Torta di patate dolci e mandorle(トルタ・ディ・パターテ ドルチ・エ・マンドレ)
サツマイモとアーモンドの焼き菓子


白状すると、このレシピ、オリジナルは「栗とアーモンド」のタルトだった。
「リッツがそんなに栗が好きなら、栗のお菓子作ってあげる!」と言い出したのは、
トスカーナ州で居候先の主婦、クラウディア。
しかし、イタリア人が「栗」を料理に使う場合、栗の実そのものではなく
、生栗を粉砕した「栗の粉」を使うのがほとんど。
だから、最初は私もたいして期待してなかったのだが…。

「でもね、これ私も一度も作ったことないの。だってえらく手間がかかりそうなんだもの」
そう言ってクラウディアが用意し始めたのはバケツ一杯の栗。
なんと、栗の実そのものを使った正真正銘の「栗」のお菓子だったのだ。
粉状に砕いたアーモンドとともに、茹であげた栗をマッシュしたものを焼き込むこのお菓子、
手間はかかるが、うまくないはずがない。
初めて作ったというクラウディア自身も近所のおばさんに配りまくるほどの感激ぶり。

「ブォーナ!こんな栗のお菓子食べたことない!
ええっ、栗を裏ごししたの?!まあ、なんて贅沢な!」
皆、その場でパクリと立ち食いしては、それはまるで奇跡の味といわんばかりの驚きぶり。
私も、「栗の粉」ではなく「栗の実」そのものをふんだんにつかったレシピに
イタリアでやっと出会えた幸せをかみしめていた。

しかしこのレシピ、日本に帰って一人で作ってみると非常に困った事態に直面する。
もちろん、三十年来の栗好きにとって栗を剥く作業なんて大した苦ではないのだが、
それよりも、茹でた栗を剥いたそばから、ほっくりと湯気がたちのぼるのを見ると、
「さあ食べて」と言ってるようで手を出さずにいられない。
つまり裏ごしに至るまで冷静に貯め続けることができないのだ。
そこで、ふと栗の代わりに思いついたのがサツマイモ。
これはいい。
一本まるごとゆでたイモは、するすると皮がむけるし、
裏ごし作業もあっという間。味の方もよくあるスイートポテトなんかよりさっくり香ばしく、
ふっくら軽く…、栗で作るより、…いいかも!

卵の黄身と砂糖を合わせたところに裏ごししたサツマイモを加えてよく練り、
ここにメレンゲ状にした卵白を加え、ふんわり混ぜてオーブンへ。
小麦粉も、膨らまし粉も一切使わない、純正サツマイモ菓子。
秋深まる季節に、お薦めのドルチェです。