2003年11月

2003年11月
今月の【料理教室】から、この一品
Torta di patate dolci e mandorle(トルタ・ディ・パターテ ドルチ・エ・マンドレ)
サツマイモとアーモンドの焼き菓子


白状すると、このレシピ、オリジナルは「栗とアーモンド」のタルトだった。
「リッツがそんなに栗が好きなら、栗のお菓子作ってあげる!」と言い出したのは、
トスカーナ州で居候先の主婦、クラウディア。
しかし、イタリア人が「栗」を料理に使う場合、栗の実そのものではなく
、生栗を粉砕した「栗の粉」を使うのがほとんど。
だから、最初は私もたいして期待してなかったのだが…。

「でもね、これ私も一度も作ったことないの。だってえらく手間がかかりそうなんだもの」
そう言ってクラウディアが用意し始めたのはバケツ一杯の栗。
なんと、栗の実そのものを使った正真正銘の「栗」のお菓子だったのだ。
粉状に砕いたアーモンドとともに、茹であげた栗をマッシュしたものを焼き込むこのお菓子、
手間はかかるが、うまくないはずがない。
初めて作ったというクラウディア自身も近所のおばさんに配りまくるほどの感激ぶり。

「ブォーナ!こんな栗のお菓子食べたことない!
ええっ、栗を裏ごししたの?!まあ、なんて贅沢な!」
皆、その場でパクリと立ち食いしては、それはまるで奇跡の味といわんばかりの驚きぶり。
私も、「栗の粉」ではなく「栗の実」そのものをふんだんにつかったレシピに
イタリアでやっと出会えた幸せをかみしめていた。

しかしこのレシピ、日本に帰って一人で作ってみると非常に困った事態に直面する。
もちろん、三十年来の栗好きにとって栗を剥く作業なんて大した苦ではないのだが、
それよりも、茹でた栗を剥いたそばから、ほっくりと湯気がたちのぼるのを見ると、
「さあ食べて」と言ってるようで手を出さずにいられない。
つまり裏ごしに至るまで冷静に貯め続けることができないのだ。
そこで、ふと栗の代わりに思いついたのがサツマイモ。
これはいい。
一本まるごとゆでたイモは、するすると皮がむけるし、
裏ごし作業もあっという間。味の方もよくあるスイートポテトなんかよりさっくり香ばしく、
ふっくら軽く…、栗で作るより、…いいかも!

卵の黄身と砂糖を合わせたところに裏ごししたサツマイモを加えてよく練り、
ここにメレンゲ状にした卵白を加え、ふんわり混ぜてオーブンへ。
小麦粉も、膨らまし粉も一切使わない、純正サツマイモ菓子。
秋深まる季節に、お薦めのドルチェです。